ハーモニックパターンとエリオット波動。どちらも一見とっつきにくい印象のあるテクニカル分析方法ですが、チャートを見ていると気づくことがあります。「方向感のない相場」「レンジ相場」など値動きが行ったり来たりのする場合、思い出しておきたい大切なことをシェアします。
フラットでエクスパンデットな時に出る鬼のハーモニック
エリオット波動の調整波の基本
エリオット波動分析では、5つの波からなる推進波(Motive WaveまたはImpulsive Wave)と3つの波からなる調整波(Corrective Wave)を持って一つのサイクルとしていることをPart 1で見てみました。このフォーメーションがまず基本になりますが、ここではこのブログでもよく出てくるABCというジグザグの動きを見せる調整波を見ていきます。
ガイドラインを見ると、以下の4つの基本のフォーメーションが記載されています。
・ジグザグ:5波、3波、5波から構成される5-3-5の1サイクルからなるシングルジグザグのほか、2回、3回繰り返すダブルジグザグやトリプルジグザグ
・フラット:3波、3波、5波から構成される3-3-5の基本のサイクルと、レギュラー、エクスパンデット、ラニングのバリエーション
・トライアングル:3波、3波、3波、3波、3波から構成される3-3-3-3-3のサイクルが基本で、アセンディング、ディセンディング、コントラクティング、エクスパンディングのバリエーション
・ダブルスリーとトリプルスリー:時間をかけて、上記のパターンが組み合わさったさらに複雑な調整波
ここで気になるのは、2つ目のフラットパターンで、下記の画像で表示しています。(引用元EWI)
左上のABCと左下のABCパターンの右側にあるそれぞれの画像は、ABCの各波の中で小さな波が3波、3波、5波(3-3-5)のフォーメーションを築く様子です。
ゴールドのフラットパターン
一番左のグレーのパターンはフィボナッチ88.6%を使うバットパターンに近いもどきパターン、隣のブルーのパターンではD地点がX地点の安値を割ることを想定して描画していたものです。
当時のゴールドで意識されていたのピンクのサポートライン。このサポートラインのある価格帯を割るか割らないかという目線がありました。実際は、このサポートラインの上でM字のようなフォーメーションになり、その後上昇していった背景があります。
こちらの画像は、この2つのパターンを描画した場所にズームインしたもの。
先ほど見たエリオット波動のガイドラインにあるフラットパターンのABCのイメージを思い出します。
赤でABCと描画した大まかな波では、AからBにかけて高値更新の動きを見せた後、BからCにかけて、Aの安値を更新する荒れた動きがあったことが見て取れます。
次に、ブルーのパターンを見ていきます。ブルーのパターンのD地点は、X地点の安値を更新しているのが見えます。
さらに、ブルーのパターンに重ねて描画したa, b, cという小さなジグザグにも注目します。ブルーのパターンで言うと、A地点から、B地点、C地点をたどってD地点に到着するまでABCDの一連の動きがあることがわかります。そしてABCDの中にa, b, cという小さなジグザグが存在していることになります。
ここで重要なのが、黄色のボックスの値動き。bからcにかけて、小さな5つの波を築いているようにみえませんか?だとすると、推進波という理解になりそうだし、実際、cは、Aの安値を割っているから売りに傾くかという目線が生まれつつあってもおかしくない場面ですね。
このa, b, cという小さなジグザグ。フラットパターンのガイドラインを再び思い出してください。ガイドラインには、「3波、3波、5波から構成される3-3-5のサイクルが基本で、レギュラー、エクスパンデット、ラニングのバリエーションがある」となっています。
もう、お気づきではないでしょうか?
大まかに捉えた赤で描画したABCのBからCへの動き、さらにブルーのパターンのA地点からD地点までのABCDの一連の動きの中にあるa, b, cという小さなジグザグは、ガイドラインにある3-3-5の5の部分のフォーメーションを形成していたことになります。
ブルーのパターンで言えば、A地点からB地点まで3波を築いてa、B地点からC地点までも同じように3波を築いてb、C地点からD地点までは5波を築いて cという解釈になります。
フラットパターンとハーモニックとフィボナッチ
ここまでで、波の形と形成される波の数が重要なことがわかりましたが、ここからは、お題にあるようにフィボナッチとハーモニックパターンにもご登場いただきます。なぜなら、エリオット波動は、単に推進波や調整波の波のフォーメーションを見ているだけではないからです。
先ほどのブルーのパターン。X地点とD地点で見たフィボナッチプロジェクションは1.128%となっています。B地点とD地点を見た場合のフィボナッチプロジェクションは3.503%となっています。3.503%はフィボナッチリの主要な数値3.618に近い数値ですね。
他の記事をご覧になっていればお気づきかもしれませんが、フィボナッチプロジェクション1.128%を使うハーモニックパターンには、変形バットやシャークパターンがあります。この2つのパターンはフィボナッチの88.6%を使うバットパターンと縁があります。88.6の逆数は1.128で、まさにフィボナッチマジック炸裂の鬼のパターンになります。
実際、ゴールドが反転して上昇したことを考慮すると、ゴールドはここでガイドラインで見たCがAを少し更新するフラットパターンを築いていたことがわかりますね。そして、このようなわずかに高値や安値を超えるフラットパターンは、変形バットやシャークパターンのようなハーモニックパターンとのつながりが深いということになります。
鬼のエクスパンデットフラットパターン
エリオット波動のガイドラインにあるフラットパターンの2つのイメージには、もう1つ、Cが、えらく長く、Aを大胆に更新しするようなフラットパターンがありました。下記の画像で見てみます。(引用元:EWI)
ABCの調整波では、A波とC波が同じ長さになるレギュラーという基本パターンがありますが、画像のように、C波がえらく長く、A波を更新してしまっているようなケースは、トレーダーにとって非常に厄介なケースです。
なぜなら、先ほどゴールドの所で見たように、勢いのある推進波のような動きでCを形成し、Aを更新しているので、ダウ理論から見ても、その更新したトレンドが継続するという目線になってしまうからです。
ただし、ここで忘れていけないのは、これは調整波であること。パターンのフォーメーションが完了すれば、チャートの左に見えている元々のトレンドの方向に価格が動く、つまり、ゴールドで言えば、売りではなく、買いという逆走のプライスアクションになるということです。
ガイドラインには、「エクスパンデットフラットでは、Cは、通常、Aの長さの1.618倍になり、しばしばA地点を61.8倍超えた場所でC地点が完了する。稀なケースでは、CがAの2.618倍伸びることがある。さらに、Bは、時折、Aの1.236、または1.382倍の長さになる。」とあります。1.236、1.382、1.618などフィボナッチの主要な数値が明記されています。こうしたフィボナッチの主要な数値に価格が到達した場合、以下のことが考えられます。
・調整波Aを使って描画するフィボナッチ1.618%を使うディープクラブパターン
・先ほどの黄色のボックスや上記の画像のC波だけを見た場合に短期足で検出されるディープクラブパターンやブラックスワンパターン
・上記の画像では見えないさらに左側にあるはずの安値を使ったシャークパターン、ネンスターパターンといった新種のハーモニックパターン
文章だけだとわかりづらいので画像を記載しますね。
ドル円ののブラックスワン
画像の真ん中から下落している相場で、まさにガイドラインの画像にある推進波のようなC波の可能性のある相場でした。
勢いのある下落の動きですよね。
下落の波の最後の方に、新種のハーモニックパターンであるブラックスワンパターンが登場しており、C波は間もなく完了か?という場面を想定できますね。
ポンド円のネンスターパターン
XABCDを描画していませんが、パターンの一番左の点がXとなり、そこからABCDとつなげていきます。画像中に1.447とあるのは、先ほどのガイドラインの「Bは、時折、Aの1.236、または1.382倍の長さになる。」の部分に相当します。1.382に近いです。相場のセンチメントが傾いたり、経済指標の発表があるとフィボナッチ数値を超えるのはよくあることです。
いずれにしてもこのネンスターパターンから見えるのは、高値を付けたように見せて、安値を更新するという鬼のプライスアクションを見せる調整波の可能性を示唆していることです。C波の推進波が伸び切りだすと、「あなたは尻尾にいるんですよ」みたいに警告してくれているのでしょうね。
ドル円15分足のディープクラブパターン
最初の方に見たゴールドのM字を思い出すような場面でディープクラブパターンが出ていますね。
まとめ:調整波には、3つの波が同じ長さになる基本のABCだけでなく、直近の高値や安値を更新したような鬼の動きを見せるフラットパターンやエクスパンデットフラットがあることがわかります。
そして、このような複雑な調整波の場合、フィボナッチが活躍し、さらにそのフィボナッチの応用であるハーモニックパターンがエッジのある視点をもたらしてくれます。
エリオット波動の調整波とハーモニックパターンは非常に相性が良いというのがわかります。トレードで避けるべきは高値で買い、安値で売ること。その場の流れについていくよりは、今いる価格帯が推進波なのか調整波なのかをチャートで見ておくといいですね。
この続編「エリオット波動とハーモニックPart 2(続編): 調整波のトライアングル&スラスト」もご参照ください。