ハーモニックパターンを使ったトレードで見かけるデメリットとも捉えらえる要素について、「気になるデメリット編」として掲載しています。PRZ(潜在的反転ゾーン)を突き抜けて「なんだよー、ダマシ?」と思うことはありますが、よく考えるとデメリットであっても納得いくんですね。その理由などシェアします。This post carries a second part of ‘Pros & cons of Harmonic trading’, just focusing on cons.
ハーモニックパターンのダマシはよくあること?でも納得いく点あり
Cons of Harmonic Trading?
チャートを見ていると、「ハーモニックパターンが検出されたのに価格が反転しないじゃないか = ハーモニックパターンはだましが多くて使えないね」と結論付けてしまいたくなる場面があります。でも、ハーモニックパターンが使えないと思った後に、価格が当初検出されていたハーモニックパターンのPRZ(潜在的反転ゾーン)に舞い戻ったりすることもよくあります。
まずは、ハーモニックトレードで必ず使われる言葉PRZを説明します。PRZは、Potential Reversal Zone(潜在的反転ゾーン)を意味します。形成されるハーモニックパターンが示す価格の反転エリアのことです。上昇トレンドであれば、下落に転ずる可能性のある価格帯、下降トレンドであれば、上昇に転ずる可能性のある価格帯を示唆してくれます。下記では、ハーモニックパターンが使えないと思いたくなる理由や、それへの対処などを探索していきます。
ハーモニックトレードのデメリット(前編)
価格がPRZ(潜在的反転ゾーン)を突き抜け、だましになる(;´д`)
ハーモニックパターンを使っていて、「まじ?PRZを突き抜けてきますか?」という事態に遭遇することはあります。センチメントやトレンドの勢いが強い時には、特にそういう状況になりやすいです。
例えば、2018年4月に投稿した「CHF may be back to the centre stage? スイスフランがそろそろ目を覚ます?」で記載していたスイスフラン(CHF)。止まりそうで止まらずに下落継続。CHFは売りのポジションも増え続け、完全に目線は下げという環境でしたので、フィボナッチのキーレベルで少し止まったからといって買いポジションを立てるのはやはり無理がありましたね。トレンドには逆らうなということです。
それでも、ハーモニックパターンが示したフィボナッチのキーレベルでは、レンジになるなど何かしらのプライスアクションが出ていたので、パターンが出た後、すぐにエントリーせず、プライスアクションを待つのが得策だった相場です。
「おいおい、やっぱり、戻ってきたではないか (# ゚Д゚)」
PRZを突き抜けてしまったので、パターンが使えないと判断しそうになってから少し時間がたち、気を抜いた時、経済指標や要人発言でローソク足がひげを付けて戻ってきたり、東京やロンドンといったセッションの切り替わりと合わせて価格が戻ってくるケース = ダマシのようなケースとなることもよくあります。
ハーモニックパターンが検出された一発目で価格が反応したものの、成立しなかった場合、次の4つのことを思い出すといいかもしれません。
A.PRZが文字通りゾーンであったり、節目とぴったり重ならない
ハーモニックパターンのD地点とPRZがぴったり重なり、価格が反転する場合が多いのですが、場合により、D地点とPRZの最上限(最下限)に幅がありゾーンとなることがあります。この場合、チャートパターンなど他の根拠が重なる節目まで値幅に余裕があるので、価格はそのPRZの最上限(最下限)をテストすることがあります。
USDCADのチャートを見てみます。2019年6月にシャークパターンが出ました。
チャートパターンを意識すると、濃紺のチャネルを引くことができます。
そして、シャークパターンのPRZはこのチャネルの下限にあります。その後、7月9日現在、まだレンジを抜けていません。PRZの近くに、移動平均線、ピボットポイントなど他のテクニカル分析の要素が集まる節目(コンフルエンスのエリア)があると、その節目まで価格は動くごとがあります。
大多数を占めるハーモニックパターンを使っていないトレーダーや、チャートパターンやテクニカル分析の基本だけを使うトレーダーの目線を理解しておくと、慌てなくなります。
B.ハーモニックパターンに表示されるフィボナッチ比率そのものに余裕がある
例えば、ディープクラブパターンのD地点が表示するフィボナッチプロジェクションの比率が2.236%と表示されていれば、フィボナッチそのものがまだ伸びる余裕があるので、次のフィボナッチレベルの2.618%、3.14%、3.618%などまで伸びていく(=価格が動く)ことを想定しておきます。
この画像は、10月10日にブレクジットのニュースで爆上げしたポンドドルに検出されたバタフライパターン以降のプライスアクションを示しています。
画像上部にある濃紺のラインは年足ピボット。そして、このバタフライパターンのPRZは、年足ピボットの少し上にあります。
上記のUSDCADで見たチャートパターンなど他の根拠が重なる節目まで値幅に余裕があるというケースですね。言い換えれば、直近のプルバックから、この年足ピボットまで再度上昇の可能性もある?という場面です。下位足であれば、PRZがずれていてもそれほどのピップ数になりませんが、このチャートは日足で、約300ピップスほど値幅があります。
なお、検出されているバタフライパターンのBとDの地点を使って計測されたフィボナッチプロジェクションは、2.11%となっています。PRZとして表示されているフィボナッチの数値は2.618%。このことから、今の価格帯では、この上昇は第3波ではないか?というように、エリオット波動と組み合わせてシナリオを立てることも可能です。
下記のリスト内にあるエリオット波動とハーモニックパターンPart 1で扱っている「ABCDパターンとエリオット波動」にある推進波とABCDパターンや、ABC調整波などのガイドラインなどをご参照ください。
C.ハーモニックパターンが別の比率を使ったものへと変化する
ハーモニックパターンのPRZを突き抜けると、異なる高値と安値を使った別のパターンに切り替わることもあります。例えば、フィボナッチリトレースメントの88.6%を使うバットパターンが、フィボナッチプロジェクションの1.128 (1.13)を使う変形バットやシャークパターンに代わるということを意味します。1.13の逆数は、88.6。面白いですね。
2019年3月のポンドドルのチャートです。B地点からD地点までのフィボナッチプロジェクションは、2.618%に近い比率を出しています。
2.618は、1.618の次によく知られたフィボナッチ数値です。そして検出されたバットパターンが表示しているPRZは、まだ下の方にありますね。ここで反転しなければ、フィボナッチ2.618の次の数値ある3.14、3.618まで伸びることを想定します。
この価格帯はサポートエリアですが、例えば、その時の状況次第(BOEの発表など)では、このバットが、短期的にスパイクを付ける変形バットに変化していた可能性もあるわけです。変形バットや、安値や高値を更新して「だまし」で終わらせるパターンなどの関連記事は最後に記載しています。
D.とはいえ、価格がフィボナッチを無視して延々と伸び続けることはない
これは、皆さんもフィボナッチを使っていて、すでにお気づきではないでしょうか?
5分足でも、1時間足でも、その時間足のトレンドの初動から、価格がフィボナッチプロジェクション、フィボナッチエクステンション、フィボナッチエクスパンションの3.618、4.236、4.618、そして5.0のレベルまで到達すると、多くの場合、1つのサイクルを終えるためトレンド転換を示唆し始めます。
5分足の小さなサイクルが終わりそうだから利確するスキャルピングのトレーダーがいます。1時間足のひとまわり大きなサイクルが終わりそうだから利確するデイトレードのトレーダーがいます。その反対に、日足や週足を見ているスイングトレーダーは、5分足や1時間足のサイクルが終わっても、日足や週足レベルでのフィボナッチが3.618などのキーレベルに達していないため、ポジションを保有しているはずです。
このように、小さな時間足でできる波のフィボナッチが伸び切ったところで利確する動きが出るから、価格にどんどん波が形成されるんですね。
逆にいうと、どのタイムフレーム(時間足)で自分がトレードするのかを決めておかないと、目線がぶれます。長期足を使ってスイングトレードをしているなら、経済指標などでスパイクを付けるような短期足の動きに振り回されることが少なくなります。そして、どの時間足でも、価格がフィボナッチの主要な数値3.618、4.236、4.618、そして5.0まで伸び切った「伸び切りゾーン」に近づき始めると、MACDやRSIのオシレーターなどは、ダイバージェンスを見せ始めます。
「頭と尻尾はくれてやれ」
この格言、ここまで読まれると意味があることがわかるかもしれません。ハーモニックパターンのPRZを突き抜ける動きがあっても、そのトレンドを作った初動からの動きに対して使うフィボナッチプロジェクションやエクステンションなどが「伸び切りゾーン」を示していると、「ハーモニックパターンを突き抜けたけれど、フィボナッチは伸び切っているし、これはそろそろ尻尾?」と考えることができるわけです。
2017年のビットコインのように、センチメントが強い上昇相場では「最後の上げの段階で、儲けの波に乗り遅れたくないと乗り込んでくる投資家」がいます。
でも、伸び切りゾーンでは、オシレーターと価格の間にダイバージェンスも出始め、値動きもウェッジのようになって、行ったり来たりのイライラする動きを見せたりするほか、何といっても、得られる利益に対するリスクの割合(リスクリワード)が悪くなります。高値掴みと突っ込み売りのリスクがあるような場所で、新たにポジションを持つのは優位性がないということをハーモニックパターンが教えてくれているんですね。
上記のUSDCADでは、短期足でチャネル下限までショートで攻めることも可能だと思いますが、到達すれば、すぐに利確することになります。あるいは、「自分は、様子見(Stay aside)」といったスタンスに切り替え、このチャネルの下限から買いのポジションを持つ方にまわり、リスクが少なくてリワードの高いトレードを実行し、「がっつりいただく」ということが可能になりそうですね。
このブログでご紹介しているハーモニックパターン検出ツールは、1つの時間足のチャート上に複数のパターンを描画しません。PCのメモリなど動作に負担をかけないため、価格が動くたびに次のパターンを探しに行きます。そのため、パターンが検出されると手動でPRZをマークしておくことが必要になってきます。
長期足で完成するハーモニックパターンからの反転には時間がかかる (´^`;)
こちらは、今でも居座る2015年に検出されたUSDCADのモンスターガートレー。
この月足のローソク足を見ると、上ひげで、下落に勢いがあったことがわかります。このガートレーは、2019年現在でも居座っております。
こちらは、2018年1月にブラックスワンが検出されたユーロドル。
4月にブレイクするまで長い間横向きの動きでした。日足、週足、月足などで検出されるハーモニックパターンの場合、PRZの中で、数日から数週間レンジのようになって過ごすこともあります。
USDCADのような動きだとわかりやすいのですが、パターンが出たからといってすぐにトレンド転換するわけでもなく、忍耐が試されますよね。
ユーロドルの場合は、すぐ上に年ピボットポイントR1があるので、これはヒットするだろうという思惑での買い目線のトレーダーもいたと思います。週足が約300ピップスはあるので、PRZの中にいると認識して、短い足でトレードをすることは可能ですが、長期足の売りパターンですので、下にブレイクすると、かなりのピップ数を見込めるスイングトレードができていたことになりますよね。そして、実際、下落しましたね。
続編:記事が長いので、ここからの後半部分は、「ハーモニックトレードの合理的なデメリット(続編) HARMONIC’S REASONABLE DISADVANTAGES」として分けております。
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