移動平均線(Moving Average: MA)は基本のテクニカルツール。ネット上に移動平均線について優れたリソースがたくさんあり、あなたにとっては「もう知っているよ」というものばかりかもしれませんが、普段使っていて感じたことをシェアしています。なぜなら、相場はこれを繰り返しているからです。
虹色の飾り物が使える道具になる時
Technical analysis tool -Multiple moving averages could end up as decoration on the charts.
(追記:2022年12月25日)2020年3月10日に編集した内容が長いので、2パートに分割しています。
MAはシンプルに使いこなすのが一番
数値や種類で悩むよりも、市場の目線と相場の環境を理解しよう
チャートでよく見かける移動平均線(Moving average: MA)。移動平均線には、単純移動平均線(SMA)、指数平滑移動平均線(EMA)など種類がたくさんあり頭を悩ませてくれますよね。
FXを始めたばかりのころは、異なる数値の移動平均線を色を変えて配置していましたが、実際のトレードに役に立てることができていたかというと、そうではなく、単なる虹色の飾り物状態でした。どの設定が正しいのかわからず、色んな期間のMAを表示したくなるのですが、実際にすべてを表示すると、チャートが蜘蛛の巣のようになります。
移動平均線の使い方で誰もが知りたいのは、「どの移動平均線をどういった設定値で使えばいいのか?」ということだと思います。20MAを好む人もいれば、21EMAや25MAを好む人もいて、正しい答えはありません。ドル円など通貨ペアごとに相性のいいMAもあります。
単刀直入に言えば、これさえ見ておけば絶対大丈夫なんて移動平線線はないようです。移動平均線を使う上で一番大切なのは、大多数のトレーダーが使っているデフォルトの設定値を使うことが基本ということです。欧米のプロトレーダーや講師の移動平均線の設定値を見ると、デフォルト設定の20MAなどを使っていて、余計なことはしていません。
移動平均線も他のテクニカル分析ツールと同じ!上位足 >下位足
移動平均線をなぜ使うのか?それは、移動平均線の向きから、相場の環境を認識するためだというのとをご存知だと思います。相場がどっちに向いているのか?をきちんと理解するのは、設定値を気にする以上に重要な要素になります。
ダウ(US30)フューチャーズの4時間足です。画像中にピンクの点線で日足の20MA、水色の点線で週足の20MAを描画しています。週足と日足の移動平均線20MAが下向きになり、かつデッドクロスしている状態ですよね。また、長期足の20MA、日足の20MA、さらには4時間足の20MAが揃って下向きになっているのがわかります。
このように、大きな時間足と小さな時間足の移動平均線が同じ方向に向かってきれいに並んでいる環境を「パーフェクトオーダー」というのをご存知だと思います。画像の左側から真ん中あたりまでは、4時間足でダウントレンド、つまり、1時間足や15分足でトレードできる勝ちやすい相場環境になっているんですね。
マルチタイムフレーム分析という言葉を聞いたことがあるかと思います。複数の時間足の環境を分析するということです。
- 上位足と下位足のチャートで、日足や4時間足などの20MAなど主要な移動平均線はどこにあって、どちらに向いているか?
- 各時間足のチャートで、価格(ローソク足)は、その時間足の移動平均線に対して、グランビルの法則のように動いている相場か?
- 上位足は下向きの相場。15分足では、移動平均線が絡まっており、いずれ上放れする、あるいは下放れするレンジ相場のよう。それなら、ブレイクで仕掛けることに優位性があるか?
ポイントは、日足や4時間などの上位足の移動平均線、1時間や15分足などの短期足移動平均線がどういう向きになっているのかを理解することで、流れに逆らったトレードを控えるスキルが付いてきます。
移動平均線一本でもチャートの見え方が変わりますが、上記のように、大きな時間足の移動平均線を一緒に描画することで、相場の環境認識がスムーズになるのでぜひ試してみてください。
異なる移動平均線で生まれる目線の違い
上記のダウのチャートで見たように、週足、日足、4時間足、1時間足など大きな時間足の移動平均線20MAの傾きを見ることで、その時間足の相場が上昇トレンドにあるのか、下落トレンドにあるのか、レンジにあるのかを判断できます。
設定値ですが、5MA、9MA、20MA、50MA、100MA、200MAといった様々な設定値があります。また、最初に触れたように、移動平均線には、単純移動平均線(SMA)と指数平滑移動平均線(EMA)があります。EMAは、直近の価格を優先して使うため、ローソク足がより早く反応するのが特徴です。
でも、これまでいろんなチャートを見てきて気が付いたことがあります。50SMAと55EMAを使った場合を見てみましょう。
画像中、ピンクが50SMA、青が50EMAになります。この2つの移動平均線の間に隙間ができているのが見えますよね。
値動きを見ると、その間で買いと売りが交錯し、レンジになりやすくなる環境が生まれているのが見えませんか?この画像で見ると、50EMAで反応したため、ポジションを持ったとしても、価格は、50SMAの方まできっちり戻ってきているのもわかると思います。
これが5分足だとピップ数にそれほどの違いはないかもしれませんが、日足だと、ピップス数が広がります。一番左と一番右の青いマルで囲った場所では下や上にスパイクを付けた嫌な動きをしているのが見えますね。EMAを使っていて起こりやすいのは、SMAの方に戻る動きに耐え切れずに、焦って損切りする可能性です。
何が言いたいかというと、「EMAを見て、先を急いで見切り発車する」か、「SMAを見て、ゆっくりと急がば回れ」かという感じかな。
単純移動平均線と指数平滑移動平均線で迷っている場合は、チャートを開いて、価格がどの移動平均線で反応しているのか?などをじっくり見てみることをお勧めします。
先行指標のフィボナッチと異なり、移動平均線は遅行指標です。移動平均線は、価格が動いた後に形成される終値を使って形成されます。そのため、設定値を変えすぎると、自分が市場とずれた目線でチャートを見ているという可能性が出てきます。移動平均線はトレンドなのか、レンジなのかを示唆してくれる遅行指標であり、それだけで、エントリーを決める手掛かりにはなりづらいということもあります。
上位足の20MAを下位足のチャートにも設定してみよう
先ほど、マルチタイムフレーム分析に触れたのですが、実際、ユーロドルやドル円など、それぞれの通貨で、4時間、日足、1時間、15分の個別の時間足のチャートをいちいち開いて見比べるのって面倒くさくないですか?
私には面倒なことです。
さらに移動平均線は20MAだけではなく、50MAや100MAなどもありますよね。先ほどの画像にすでに描画したのは異なる時間足の20MAですが、以下に設定値をシェアします。
5分足のチャートに表示する移動平均線の数値の例
1時間足の20MA:5分の12倍なので、20x12=240MA、1時間の50MA:5分足の12倍なので、50x12=600MA
4時間足の20MA:5分足の48倍なので、20x48=960MA
15分足のチャートに表示する移動平均線の数値の例
1時間足の20MA:15分の4倍なので、20x4=80MA、1時間の50MA:15分の4倍なので、50x4=200MA
4時間足の20MA:15分の16倍なので、20x16=320MA、日足の20MA:15分の96倍なので、20x96=1920MA
1時間足のチャートに表示する移動平均線の数値の例
4時間足の20MA:1時間の4倍なので80MA、日足の20MA:1時間の24倍なので、480MA
4時間足のチャートに表示する移動平均線の数値の例
日足の20MA:4時間の6倍なので、120MA、週足の20MA:日足の120MAが5日分あるので、120X5=600MA
このほか、ご自分で必要と考える50MAや200MAなども同じように計算することができます。なお、こうした移動平均線を実際にチャート上に描画すると、チャートは蜘蛛の巣になりますのであしからず。私の場合、4時間足にあるブルーとピンクの移動平均線は、それぞれ週足と日足の20MAというように、色から直感的に見えるようにしているので、皆さんも自分にとってわかりやすい色や線の種類を選んでみてください。
後は、MT4のインジケーターで「Multi Time Frame Moving Average」などいろいろあります。中には、4時間足、日足、週足の3種類の異なる20MAを一括で表示することができるインジケーターもあります。いろんな種類があるので、どれが使いやすいか見てみるのもいいかもしれませんね。
不思議にも効く超長期の800MA
移動平均線でよく使われるのが、5、10、20、25、50、55、75、100、125、200、400などですが、私の場合、とりわけ気になって描画しているのが800MAです。
えー、800MA?
これは、2019年6月の「ドル円・カナダドル円の節目: ビューティフルなUSDCADのABCDパターン – CADJPY in a channel」で触れていたユーロドルをMT4でみたものです。
オレンジの移動平均線が800MA。FXに限らず、米株式やゴールド、シルバーのコモディティでも、30分足、1時間足、4時間足の800MAが、押し目、あるいは戻り高値として結構意識されていることがあります。
トレンドが続いていても、4時間足で800MAまで値幅がある場所に到達して徐々に伸びなくなってきた場合、この800MAまで上昇、あるいは下落するプライスアクションを見せることも頻繁にあります。
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