エリオット波動の調整波とハーモニックパターンをテーマとした記事「「エリオット波動とハーモニックパターンPart2 : フラットやトライアングルなど調整波(Corrective Wave)」の続編となります。記事が長いので後半をこちらに別途掲載しております。
高値・安値更新からの逆走には理由あり
調整波とブラックスワン
Part 1の前編では、フラットパターンやエクスパンデットフラットなど、調整波でよく出てくる難しいパターンについて見てみました。特にエクスパンデットフラットパターンでは、直近の高値や安値を更新したような動きを見せるので、目線にぶれが出やすく、振り回されて損切りといった結果につながることもあります。
エクスパンデットフラットパターンは難しいパターンなのですが、Part 1の前編で見たように、フィボナッチプロジェクションの1.128(1.13)を使う変形バットパターン、フィボナッチプロジェクションの1.128(1.13)や2.24を使うシャークパターンなど、新種のハーモニックパターンが活躍しているのがわかります。
下記では、ブラックスワンの役割も見ていきます。
ブラックスワンという名前通りの鬼のパターン
最後のブラックスワンについては、「エリオット波動とハーモニック Part3:推進波とブラックスワン(Impulsive wave & Blackswan)」で推進波に対して検出された場合を検証していますが、調整波にもブラックスワンを適用することができそうです。
例えば、その調整波が形成されている時間足の値動き(例:1時間足)が、上位足(例:日足)のトレンドに対するカウンタ―トレンド(戻り高値や押し目を付ける動き)の動きである場合を想定すると見えてきます。
相場はフラクタルであり、上位足でも下位足でもサイクルを築いています。そのため、カウンタートレンドを築いている1時間足の値動きの中でも、推進波と調整波から構成される小さなサイクルが築かれています。
言い換えると、日足の下落トレンドに対して、1時間足で反発上昇しているような相場では、この1時間足で推進波⇒押し目⇒推進波という動きがあります。この時に5つの波からなるC波が伸び切ってくると、ここでブラックスワンが出てきます。つまり下位足の推進波にブラックスワンが検出されるが、上位足から見ると調整波のブラックスワンということになります。
トレードで避けるべきは「高値で買い、安値で売ること」
こういったC波では、今見ている時間足よりももっとさらに短い時間足に降りていくと、フィボナッチプロジェクションの1.618や2.618などを使う買いのディープクラブパターン、クラブパターン、ブラックスワンなどが検出されていることがあります。つまり、「C波の推進波は伸び切っているので、あなたは尻尾にいるんですよ」みたいに警告してくれているのでしょうね。
新種のハーモニックパターンとエリオット波動のこのフラットパターンの種類を少しでも理解していれば、高値掴みや突っ込み売りのリスクがある場面に自分がいるのかいないのかを察知することができます。
調整波のトライアングルで活躍するハーモニックパターン
フラットパターンよりもよく知られている調整波には、ABCのジグザグのほか、三角持ち合いやペナントといわれるトライアングルがあります。
トライアングルにもいろいろと種類がありますが、共通しているのは、トライアングルの中の波は、「3-3-3-3-3」といわれるように、すべて3波から構成されること。フラットパターンのような5波から形成される波はありません。
ユーロドルなどチャートを見ていて、このようなトライアングルが形成され始めると、上下に行ったり来たりとなり、「レンジ相場」、「方向感がない」という言葉で表されますよね。この時、おそらく移動平均線も絡まっている状態だと思います。
トライアングルにもガイドラインがあるのですが、とりわけ良く出てくる三角持ち合いと同じ黄色でハイライトしたコントラクティングトライアングルを見てみましょう。
コントラクティングは収縮しているという意味があります。高値が切り下がるが、安値も切りあがるパターンです。このコントラクティングトライアングルのガイドラインは、ABCDEの各波の関係について、フィボナッチリトレースメントの61.8%–78.6%に言及しています。
つまり、Cの場合、AからBの波に対するフィボナッチリトレースメントの61.8-78.6%まで戻す(リトレースする)ということです。
コントラクティングトライアングルが徐々に形成されているように見える相場では、AとCが形成されれば、この2点をつなぐラインを引きます。その後、Cからの上昇であるDが直近高値のBを超えないことを確認します。超えなければ、「いよいよトライアングルも終盤?」と考えることができます。
トライアングルの完成地点となるEの地点は、AとCを結んだライン上で、なおかつ、直近の波であるCに対するフィボナッチリトレースメントの61.8%–78.6%で完成されるという目線になります。
このトライアングルなどの場合は、行ったり来たりするので、往復びんたを食らいやすく、ストレスがたまりますが、背景を理解しておくと、待つことに意味があることがわかります。なぜなら、完成地点Eから、トライアングルのブレイクをがっつりといただけるからです。
SP500のトライアングルとガートレー、そして気を付けたい「スラスト」
これは、2019年10月26日に投稿した「トライアングル(持ち合い)とガートレーから上昇を想定できたSP500、プルバックが何となく浅いポンドやユーロ達!」で見たSP500のコントラクティングトライアングルです。
茶色のライン上で、フィボナッチリトレースメントの78.6%を使うガートレーが検出されました。なお、エリオット波動分析では、ハーモニックパターンを扱いませんが、78.6%というフィボナッチ数値を使っている点が共通していることがわかりますよね。
その後はというと、価格は、トライアングルを上にブレイクしていきました。トライアングルの種類はたくさんありますが、収縮されていくコントラクティングトライアングルの中でガートレーパターンが検出された場合、エリオット波動分析だけを使っているトレーダーのトライアングルの見方と同じ目線を持っていることになりますよね。
ちなみに、上記の画像の一番下の左側のようなエクスパンディングトライアングルのガイドラインを見ると、「通常、CはAの161.8%、DはBの161.8%、EはCの161.8%」となっています。フィボナッチの黄金比率が使われていますね。そして、ハーモニックパターンで1.618と聞いて思いつくのは、ディープクラブやクラブパターンです。
さらに、DからEにかけての3波の動きで、ABCDパターンも何となく想定できませんか?ABCDパターンには、Part 1のABCDパターンの項目でで見たように、CからDまでの波が、AからBの波に対して1.618倍になるABCDパターンがあります。
なお、トライアングルで注意したいのは、通常、第4波と調整波のB波にのみ形成されるというガイドラインがあることです。そのため、トライアングルをブレイクするという動き「スラスト(Thrust)」というプライスアクションの意味も併せて理解しておくといいのかもしれません。
続編の「エリオット波動とハーモニック Part3:推進波とブラックスワン(Impulsive wave & Blackswan)」では、「スラスト」や傾いたセンチメントと縁が深そうな推進波に出るハーモニックパターンや、78.6%など関連記事を探索していきます。