ハーモニックパターンを使ってトレードすることがすごく難しいように感じられている方もいるかもしれませんが、ハーモニックパターンは、価格の動きという縦軸と、時間という横軸に、フィボナッチの使い方を理解すると見えてきます。復習を兼ねて、これまで触れていなかったハーモニックパターンの基本、成立条件、実例をPart1からPart3に分けてまとめています。
ガートレーとバットの基本ハーモニック
Harmonic Patterns Cheat Sheet 1
テクニカル分析を学び始めると、終わりがないことに気づきます。トレード手法についても同じで、トレーダーそれぞれが、自分にあった手法やスタイルを持っている世界です。それでも、トレーダー誰もが必ず学び、使っているツールの1つがフィボナッチ。ご存知のように、世の中のあらゆるものにフィボナッチの法則が見られます。相場も同じです。
値動き+時間+フィボナッチ=ハーモニックパターン
フィボナッチと値動きという縦の軸
時がたつにつれて形成される高値や安値。ダウ理論を学ぶと、これらが切り上がっているのか、切り下がっているのか、トレンドが出ているのか、レンジなのか?相場の環境認識をしなければいけませんよね。高値や安値を意識していれば、それらが節目となっていることがチャート上で見えてくると思います。
そして、フィボナッチと聞いて真っ先に思う着くのがフィボナッチ・リトレースメント。例えば、ドル円が日足など長期の時間足で下落トレンドにあり、ここ数日は戻り高値(戻し)をつけるために上昇の動きを続けている場合、この下落に転じた際につけた高値と、ここ最近の上昇の初動地点となった安値を使って、フィボナッチを引くとリトレースメントのレベルが出てきます。
この場合は、下落トレンドなので、安値から高値にフィボナッチリトレースメントを引いて、38.2%、50%、61.8%といったレベルを見ると思います。フィボナッチリトレースメントを引くことで、価格が上下する縦の動き=縦軸が存在することになります。
フィボナッチと時間という横の軸
チャート分析を学んでいると、「チャートの左側を見ろ!」ということをよく聞きます。そして、フィボナッチには、エクスパンション、エクステンション、プロジェクションという「使わないのはもったいないツール」があります。
ハーモニックパターンは、Xを起点とし、ABCDという4つの点を使います。時を経て形成される高値や安値が、このXABCDのいずれかの地点に当てはまり、さらに、これらXABCDの各地点が、お互いにフィボナッチの主要な比率を持つ場所にはまると、ハーモニックパターンとなります。
ハーモニックパターンが完成する最終地点はD地点と呼ばれ、PRZ(潜在的反転ゾーン)を形成します。時を経てパターンが完成された時、「あの時から今までの動きを振り返れば、点と点(高値や安値)がフィボナッチでつながっていた。その高値や安値という上下の動き(縦軸)に、ハーモニックパターンとして時間という横軸も追加されていた」となるわけです。
価格の上下の動き(縦軸)に、時間(横軸)の概念を加えることは珍しいことではないです。なぜなら、皆さんが使っているかもしれないフィボナッチタイム、フィボナッチファン、フィボナッチアークなどは、時間の概念を取り入れているほか、ローソク足の数や日数を数えたりするサイクル理論というアプローチも、時間の概念を使っているからです。
ハーモニックパターンで使うフィボナッチ数値
ハーモニックトレードに慣れると、MT4やMT5に関わらず、デフォルトで装備されているフィボナッチで表示される数値(レベル)では少し物足りないことが見えてきます。なぜなら、ハーモニックトレードでは、フィボナッチ数値に加え、その数値の逆数など派生する数値も使うからです。
また、フィボナッチリトレースメントの76.4%と78.6%。ちょっとした違いですが、大きな時間足ではピップ数が大きくなるため重要になります。下記に76.4と78.6に関する記事も掲載していますのでご参照ください。
- 78.6(21.4):ガートレーパターンとバタフライパターンだけでなく、エリオット波動でも活用する数値。0.786は0.618の平方根。
- 0.382と1.382:0.382は、0.618の二乗。1.382は、1.272と合わせてフィボナッチエクステンションやプロジェクションで使いたい数値
- 1.272:1.272は1.618の平方根。バタフライやネンスターで使う1.272は、フィボナッチプロジェクションの1.272%を意味します。
- 88.6(11.4):バットパターンで使う0.886は、0.786の平方根であり、変形バットやシャークパターンで使うフィボナッチプロジェクションの1.13の逆数です。
- 2.0と2.24:フィボナッチプロジェクションを使う際に重要となる数値で、ブラックスワンや5-0パターンで使用されます。
- 5.0(0.5):0.5は2と関係しており、5-0パターンの仲間である逆数5-0パターンで使うほか、5は、フィボナッチのエクステンションやプロジェクションでよく使います。1分足、4時間足、日足など、伸びてきた価格がこのレベルに差し掛かると、1つの波のサイクルが終わる可能性があります。
なお、上記の78.6と21.4についてですが、100-78.6=21.4、88.6も同じく100-88.6=11.4となりますが。フィボナッチを高値から安値、あるいは安値から高値に引いたときに逆になって表示されるだけで、同じことを意味します。高値から安値、安値から高値のどちらに向かって引いても間違いではありません。トレンドなど相場環境を見たうえで判断するからです。例えば、上昇トレンドの場合、価格がどこまで伸びるかという目標値をはじき出したい場合、高値から安値に向かってフィボナッチを引くことでフィボナッチエクステンションを使っていることになりますよね。
ハーモニックパターンの種類(基本と新種のパターン)
ハーモニックパターンの基本として学ぶバットやガートレーパターンのほか、新種のパターンもあります。まずは、よくチャートに出てくるハーモニックパターンの基本のパターンを学ぶことをお勧めしますが、新種のパターンもチャート分析の視野を広げてくれます。
ハーモニックパターンの基本として知られるパターン
- バット(フィボナッチリトレースメントの88.6%を使います)
- ガートレー(フィボナッチリトレースメントの78.6%を使います)
- バタフライパターン(ガートレーの78.6%とフィボナッチプロジェクション1.272を使います)
- クラブパターン(フィボナッチリトレースメント61.8とプロジェクション1.618を使います)
- ディープクラブパターン(バットの88.6%とフィボプロジェクション1.618を使います)
- A-バット(変形バット。フィボナッチリトレースメントの38.2%とフィボプロジェクション1.13%を使う鬼パターン)
- FXKC(このブログ内で61.8パターンと呼び、第2波や第4波の検知など、エリオット波動と相性の良いオリジナルパターン)
新種のハーモニックパターンとして知られるパターン
- シャークパターン(エリオット波動分析と合わせて使えます。)
- サイファーパターンと、「A-サイファー(アンタイ・サイファー)」(エリオット波動分析と合わせて使えます。)
- ブラックスワンとホワイトスワン(エリオット波動と合わせて使え、下記のスリードライブパターンにもうひとつ根拠を与えてくれるパターンです。)
- ネンスターと、「A-ネンスター(アンタイ・ネンスター)」(エリオット波動分析と合わせて使えます。)
- 5-0パターン(トレンドの初動を示唆するパターン。逆三尊(逆ヘッドアンドショルダーズ)のネックライン上抜けを待たずに、一足先にトレンド転換を見つけます。)
そして忘れていけないのが、下記のABCDとスリードライブパターンです。
- ABCDパターン(ABCDパターンには5種類ほどあります。ハーモニックパターンのABCDの動きだけでなく、2と0.5など逆数を使うABCDパターン、エリオット波動の推進波と調整波と関係するABCDパターンがあります。)
- スリードライブパターン(3ドライブパターンを見ると、相場は3回値を付けるという癖を理解できますね)
FXKC、ABCD、スリードライブパターンについては、下記の記事一覧にあるこの記事のPar2やPart3、エリオット波動とハーモニックパターンなどの記事をご参照ください。
ハーモニックを学ぶとチャートの見方が変わる!?
1分足から月足までどの時間足でもローソク足が形成している高値、安値、チャートパターン。意識された高値と安値は、のちにサポートやレジスタンスとなり市場に意識されるので、ハーモニックを使っていなくても、テクニカル分析の基本として必ず見ている要素ではないでしょうか?
フィボナッチの応用であるハーモニックパターンを学びだすと、チャートを開いたときに以下のような要素も意識するようになります。
- トレンドかレンジか?戻りや押し目の場所にハーモニックができそうか?
- 市場が意識した過去の高値や安値がハーモニックパターンを構成するXABCDの各地点となりそうか?
- XABCDの各地点が、フィボナッチの主要レベルである61.8、78.6、88.6、1.272、1.618、2.618などと重なりそうか?
- さらに、これらXABCDの各地点がお互いに一定のフィボナッチ比率になりそうか?
これらのXABCDは、フィボナッチリトレースメント、プロジェクション、エクスパンション、エクステンションを使ってはじき出せるものです。よく使うのはフィボナッチリトレースメントやフィボナッチプロジェクションですが、フィボナッチエクステンションやエクスパンションも、ハーモニックパターンのPRZ(Potential Reversal Zone:潜在的反転ゾーン)をはじき出すのに合わせて使え、エントリーや利確のポイントに根拠を追加してくれる重要な役割を果たします。フィボナッチエクステンションやプロジェクションなどフィボナッチツールの使い方については、下記の記事一覧にあるフィボナッチの記事もご参照ください。
4つのフィボナッチのレベルが重なってくる価格帯は、プライスアクションを引き起こすエッジのある節目です。XABCDの各地点がフィボナッチ黄金比率にはまればはまるほど、完璧なハーモニックパターンになり、破壊力抜群のプライスアクションが出ます。経済指標、ニュース、要人発言などの雑音に関係なくです(笑)
また、ドル円の日足で売りのガートレー、4時間足で売りのバタフライみたいに、MT4やMT5で表示できるすべての時間足で異なるパターンがダブルで検出されることもよくあります。なぜなら、フィボナッチやハーモニックパターンには時間の概念があり、長期足と短期足では、意識される高値や安値が異なることがあるからです。
ここからは、基本と新種のハーモニックパターンを大きく3つのグループに分けてみていきます。
ハーモニックパターン:リトレースメントタイプ
まずは、フィボナッチリトレースメントを使う基本のパターンから見ていきましょう。
前回高値や安値に対する戻し(リトレースメント)を入れて完成するいわゆるリトレースメントタイプの代表パターンとして挙げられるのは、バットパターンとガートレーパターンです。パターンの完成地点であるD地点が、前回高値や安値となるX地点を超えず、このD地点をはじき出すにはフィボナッチリトレースメントが活躍します。形はWやMのような形になります。
ガートレーパターン(Gartley)の事例
2019年9月現在のUSDMXN(米ドルとメキシコペソ)のチャート。ガートレーパターンが形成された後のプライスアクションは文句なしですね。
完成するパターンがバットパターンとガートレーであるためには、C地点が、手前の安値であるA地点を超えないことが重要です。
Cは、AからBまでの上昇の動きに対するのプルバック(戻し・リトレースメント)であることがわかります。
画像中、CはAの安値に対して88.3%の戻し(リトレースメント)となっています。バットパターンで使う88.6%に非常に近い数値ですよね。
ガートレーの成立条件
- CはAを超えない(CがAに対して付けるリトレースレベルに基準はありますが、基本はともかくCがAを超えないこと)
- 完成地点Dは、高値であるXに対するフィボナッチリトレースメントの78.6%であるため、Xを超えない
- Xに対するBの位置は、リトレースメント61.8%
- BとCを使ったプロジェクションは127.2%から161.8%が基本ですが、もう1つ重要なフィボナッチレベルも含めることがあります。
この結果、MT4のフィボナッチでデフォルト値である76.4%よりも、ガートレーで使う78.6%をよく使うようになります。
なお、直近安値や高値を超えないリトレースメントタイプのパターンが、しばらく時間をかけて連続して検出されるような値動きになると、だんだんと見えてくるのは、XとB、そしてAとCにトレンドラインを引ける三角持ち合い(トライアングル)などのチャートパターンです。
追記:2019年10月26日に投稿した「トライアングル(持ち合い)とガートレーから上昇を想定できたSP500、プルバックが何となく浅いポンドやユーロ達!」では、SP500のコントラクティングトライアングルでフィボナッチリトレースメントの78.6%を使うガートレーが検出され、トライアングルを上にブレイクした事例を掲載しています。
バットパターン(Bat)の事例
こちらは、ポンドドルのバットパターン。
サポートエリアに対して下落し、フィボナッチリトレースメント88.6%に近づいている環境です。
バットパターンの強みは、サポートや直近の高値(この場合は安値)という節目に対して、88.6%というぎりぎりまで戻してくるので、エントリーする場合、ストップの場所をきつくでき、リスクリワードが良いことが利点となります。
なお、バットを突き抜けると、88.6と関係にある1.13を使う変形バットというおいとこを想定できますが、これについてはPart 2で見ていきます。
バットパターンの成立条件
- ガートレーと同じで、CがAを、そしてDがXを超えないことが条件
- 完成地点のDは、高値であるXに対するリトレースメントレベルの88.6%
- Xに対するBの位置は、リトレースメントレベルの38.2%か50%。
- BとCを使ったフィボナッチプロジェクションは、161.8-261.8%と長くなります。
ガートレーに比べ、バットパターンでは、B地点のフィボナッチ比率の規定が緩いのがわかると思います。Bがガートレーで使う61.8%になっていない時、「これは、バットになるだろうか?」と、相場を先読みできるようになります。
ハーモニックトレードは、他のテクニカル分析の手法を無視した独自の手法ではなく、他の手法と一緒に使える優れたトレード手法です。なぜなら、ダウ理論やテクニカル分析の基本に基づいているからです。また、自分で4つのフィボナッチを使ってハーモニックパターンをはじき出すこともできますが、MT4やMT5で使うハーモニックパターンインジケーターがパターンを検出してくれれば、やはり心強いですね。
ガートレーとバットから出るプライスアクションなど過去の記事
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